Psersonal record of experiences

BLOG

2014.8.10

言葉に宿る景色

ある、光。

「東京は風に種類がないんだね。」
暑い日にふと吹いてきた風を浴びながら夫がそう言った。

彼は愛媛・香川で生まれ育った人だ。
「午前中は山風が吹いて、午後は海風が吹くんだよ。風が切り替わる時
 ピタっと風がやむんだ。その時間を〝凪〟っていうんだよ。」
〝凪〟という言葉の意味は知っていたが、それを説明する彼のタイミングと
選ぶ言葉には 風の温度、土の香り、そして〝凪〟の状態の景色が宿っていた。

ただ単にその言葉の意味を知っているということと、その状態を体感したことのある人とでは言葉の厚みというか温度が違うんだと実感した。
感じた景色はしっかりその人の言葉に宿るのだ。
風土が育む感性とでもいうのだろうか。

彼が目を細めて話す黄金色に輝く麦畑の話。
風の話。夏の思い出。瀬戸大橋からの景色。

山も海もない土地で育った私にはどの話もとても新鮮だ。
会話だけで旅をしている気分になる。

そんなことを意識しながらラジオを聴いていると
懐かしい曲がかかった。
真夏に真冬の曲。
当時はなんとも思わなかった曲だったが、いま聴いたらびっくりするくらい素晴らしい曲だった。
調べたらメンバー全員が函館出身。
きっと、全員が同じ景色を見ながら演奏しているのだろう。

わたしにもきっと、いや必ず。風土が育んでくれた感性があるのだ。
自分ではなかなか気が付かないことに意識を向ける。
話したいと思う事柄、思い出す景色、それを説明する時に選ぶ単語。

季節を感じながら、会話する人たちの故郷の景色を思い浮かべて旅をしている気分に浸る。
そしていつか聞いたその景色を実際に感じに行きたい。

th_01

CLOSE
Instagram