浮遊する「お元気ですか?」
- 2021.12.10
「お元気ですか?」
手元のスマホにそう入力して、自分の近況を綴ろうとしてやめる。
金曜日と土曜日はその頻度が多い。
あの人は元気だろうか。どんな日々を過ごして、どんな週末を過ごすのかな。
そう思い立つものの、特段報告するような近況もない自分を思うと何を伝えたいのかわからなくなってしまう。
「お元気ですか?」送ろうとした相手のアイコンにそう呟いて、そっとアプリを閉じる。
SNSでは知り得ない、その人の近況を知りたい。
だけど、わたしはもはやそこに踏み込んでいいような人ではないかもしれない。
物理的距離があって会えない時間が長くなると、自然と遠慮する気持ちが生まれてくる。そしてそれは、自分の自信のなさと直結していて、“好かれたい”というよりも“嫌われたくない”という気持ちが強くなり、現状維持という名の浮遊する「お元気ですか?」が誕生してしまう。
白く光る画面に浮かぶ「お元気ですか?」が、今日も手のひらで浮遊している。